PSYCHE

PSYCHE (プシュケ) (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

PSYCHE (プシュケ) (スクウェア・エニックス・ノベルズ)

まず冬目景が描いた表紙で目が止まり、そしてレビュー読んで興味が沸いたので買って読んだ。結果は期待を裏切らない、鬱作品だった。

作品のテーマは現実と幻覚。自分が現実だと思っていた世界は、実は自分が認識した幻覚でしか無かったと気付く。それによって人間は本当の意味では孤独であり、自分の気持ちも他人の気持ちもわかる人なんて誰一人居ない―ってのは割とありがちな物語の出始めなんだけど。

ただ多くの物語が、その孤独の中でも現実との関係性を模索して他人や世界との共感性を見出して行くのに対して、この物語はどうせ孤独なら自分独りの世界へ閉じこもっちゃえばいいんだと開き直り、周囲との関係性をどんどん絶ち切って自分の内へ内へと入りこんでいく。そこがこの作品の特異な点。

ただ元々そういう嗜好がある僕にはうってつけの作品だった。もっと鬱なときに読めていたら、よりのめり込めたと思う。ただ完全にこの世界観でものを考えるようになったら、自分以外の人は全て置き物に見えちゃうだろうから社会生活が出来なくなるけど。でもまぁそこまでいかずとも、2,3日部屋に引きこもって誰とも会わずに居たい気分にはさせてくれただろう。

なによりアイの存在が良かったな。誰とも分かり合えない人間が唯一分かり合える相手を得る方法の究極解。ピグマリオンが自分が掘った彫刻に恋をして、四六時中その彫刻が動かぬことを嘆いて居たら、神が見かねて彫刻に命を宿しピグマリオンと結ばせてやった。この伝説を神の仕業と見るか、ピグマリオンが狂っただけと見るか。この小説は後者の解釈で書かれていた。ただし、どちらの解釈でもピグマリオンが幸せなことに違いはないのだけど。